クリシン バカ

4月から学生を教えることになるが、学生に何を学んで欲しいかと言えば(なんて偉そうな…)知識ではなくて、物の考え方、特に論理的思考法ということになるかねぇと思ったりする。そういう授業をしなくてはいけないということもあるが。

もちろん、神経信号の伝達の場はシナプスと言うとか、そこでは伝達物質による化学信号がやりとりされるのだよとか、そもそもの神経分布はどうだとか医学生として最低限の知識は身につけて欲しいのだけれど(神経生理の教室員になる身としては)。

クリティカルシンキング 入門篇: あなたの思考をガイドする40の原則

クリティカルシンキング 入門篇: あなたの思考をガイドする40の原則

で、論理的思考法というのはこの本の著者が言うとおり、ある時点できちんと意識しないとつい陥穽にはまってしまう。著者の言う、クリティカルな思考とは「適切な基準や根拠に基づく、論理的で、偏りのない思考」ということで、一言でいえば「良質な思考」ということになる。

ま、こちらの方から一言いえば、第5章冒頭に挙げられているように、「ユリ・ゲラーの超能力を一目見て、その結果を実感し、信じてもらうようになっては困る」からそうならないような思考法を学びとりたい。


何も超能力信奉者にならないまでも、「今までの経験や知識を元に、簡便なやり方を用いて大まかに確立判断を下す。そういうヒューリスティクス(簡便法)」思考は医者の中にも溢れているわけで…自分の体験した「少数の患者に効いた経験」を大多数の人に何の疑問も持たずに汎化させて適用させてしまうヒューリスティクス使いの上司には困ったものです。


強い主張を沢山持っている人に言いたいのはこれ。

「たんなる偶然(偶然の一致)」こそが、しばしば最も有効な説明原理である。(クリシン原則38)


バカとは何か (幻冬舎新書)

バカとは何か (幻冬舎新書)

「バカ」には何通りもあるという著者(精神科医なんだよなぁ)。知識だけを使って物を言い、自分の推論を挟まないのもバカなら、もちろん知識を何も持たないのもバカ。バカは気づけば治る、治せるのに治そうとしないければやはりバカ。
えぇえぇ、お説ごもっとも何だけど、読んでいるうちに不快になってくる。そんなに、バカバカとバカの二文字をページに載せんでも…。著者の出会ったバカにまつわる自験例は余り語らない方が良いと思うのですがね。

そういえばこの著者はこんな本も書いていた。結果こそ大事だから、「数学が暗記とは口が裂けても言いたくない気持ち」はわかってもらえないんだろうねぇ。