続・ウイーン愛憎

ウィーン愛憎―ヨーロッパ精神との格闘 (中公新書)

ウィーン愛憎―ヨーロッパ精神との格闘 (中公新書)

続編出たのに、はまぞうには無いのか…。

危うい家族との絆を保つためにウイーンと東京での二重生活を始めることになった中島家族。前回の「ウイーン愛憎」では少なくとも妻への愛はずうっと感じられていたのだが、「人生を半分降りる」でわかるとおり周囲をシャットアウトするのが好きな先生のこと、当然のごとく妻との関係は危うい。
それでもドイツで妻と息子のためアパートを見つけてやり、息子のアメリカンスクール入学への為に八方手を尽くし、家族に献身的な風でもあるのだが、ラストはね…。

面白かったのは二点。
ウイーン大学での「ヤパノロギー(日本学)」の隆盛。中島がかつて留学した頃と違い、日本はもはや奇異な国ではなく、技術力の高く、文化の高級な国なのだ。

「れる・られる」の用法演習の授業の例文。

あした先輩は授業に来られますか?(尊敬)
きのう、てすとの勉強をしていたら、ともだちに来られてこまった。(受身)
インフルエンザで大学へ来られませんでした。(可能)

なんてのが黒板に書かれているのが楽しい。


それと、日本で騒音と戦う中島先生が、静かだったウイーンで同じ目に遭う。携帯電話の音に市民は無頓着、市電に乗り込めば車内放送がでかい、列車は着く度に「ドアは自動的に開きます、ドアは自動的に開きます、ドアは…」という自動放送が流れる。
中島先生、日本と同じく騒音への戦いに孤軍奮闘しつつ、
「ウイーン人がとりわけ静寂を好むという『迷信』は捨て去るべきである。たまたま、これまでは音響製品の発達が遅れていたから、静かだっただけである
と慨嘆する。

人生を“半分”降りる―哲学的生き方のすすめ (新潮OH!文庫)

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うるさい日本の私 (新潮文庫)

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