「大黒屋光太夫」

吉村昭「大黒屋光太夫」を読了。

大黒屋光太夫(上) (新潮文庫)

大黒屋光太夫(上) (新潮文庫)

伊勢に生まれた光太夫は船頭として出帆した航海で、漂流、ロシアに漂着する。
漂流は過酷を極め、17人のうち12人までが次々と死亡していく。
その中、ロシア人に保護されて、イルクーツクに腰を落ち着けると、そこでキリロという高名な植物・鉱物学者の助けを受け、帰国を皇帝エカテリーナに嘆願。ついには帰国を認められるが、最終的に帰国できたのは3人。うち1人はすぐに死亡したため、結局生き残りは2人であった。

物語全般が波乱に富んだ面白いものだが、鉱物学者キリロの光太夫たち、日本人に対する無償の援助、帰国したくてもそれを絶望し、ロシア正教に入信したためにロシアに残ることになった2人と光太夫たちとの涙の別れの場面が特に胸を衝いた。