「キングダム・オブ・ヘブン」 

監督が「ブレードランナー」や「エイリアン」のリドリー・スコットで、大好きな俳優ジェレミー・アイアンズ(「ミッション」、「戦慄の絆」、「運命の逆転」など)が出ているので観に行きたかった。最近ぱっとしていなかったのだ、彼は。

まあ良かった。
主人公はエルサレム王ボードワンⅣ世から王位継承を願われるが、自分のつまらない主義のため蹴ってしまう。結果的にはそれがエルサレム攻防戦につながってしまうので、善人でも正義漢でも戦争は起こせるんだなという見本。

ジェレミー・アイアンズ扮する賢王ボードワンⅣ世の顧問、ティベリウスは攻防戦を前に主人公の前から去るが、自分には王位を継承せず、多くの民衆を危機にさらしている主人公への批判、失望に感じた。

ボードワンⅣ世はライ病のため仮面を付けているが、出演シーンの存在感は圧倒的で、さすがエドワード・ノートン。顔を出さずとも演技の巧さは隠せない。この王は実際にライ病で夭折したようだ。サラセン王サラディンとの間に和平を結ぶなど、映画では賢王として描かれているが史実はどうなのか確かめたいところ。あんな若いのにどうやって統治に成功していたのか。
和書にはいいのがなさそうにないが、洋書にはある。

The Leper King and his Heirs: Baldwin IV and the Crusader Kingdom of Jerusalem

The Leper King and his Heirs: Baldwin IV and the Crusader Kingdom of Jerusalem

サラディンも魅力的で、イスラム社会では英雄として讃えられているようだが、恥ずかしながらよく知らない。

十字軍のことも含め、ちょっと本を読んでみるか。
ちくま学芸文庫から「アラブが見た十字軍」という名著があるようなので、まずはそれから。ちなみに文庫のくせに1575円。この文庫はいつも高い。

アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)

アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)

今ハリウッドで流行っているのは実在の人物に名を借りた伝記風映画だという。そういえば同監督の「グラディエイター」もそう。
映画では人物もストーリーもシンプルにしてしまうため、史実を調べてしまうと、この人もこんな一面(えてしてひどく残虐であったり、愚かしいものであったりするものだ)があったのかとがっかりしてしまうことも多いが、それでも事実を知らずに、「あの人はあんなに素晴らしい事をしたのだ」と勘違いしたままだと口惜しい。
この映画もそうなるかな。