「ローマ人の物語」 ティベリウス

塩野七生の文庫を読む。「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17.18巻。

ローマ人の物語 (17) 悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (17) 悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)

塩野七生の文章は、客観さを失わない程度に従来の見方への異なる評価や率直な感想を交えて、飽きさせない気がする。
ちょうど、この巻は第2代ローマ帝国皇帝ティベリウスについて書いており、興味深く読めた。この人は従来は悪帝とされていたが、近年急速に評価を回復している人である。

悪評は、ティベリウスが冷徹な現実主義者でユーモアを持ち合わせていなかったこと、庶民の人気取りのために剣闘士の試合やいたずらな公共事業を行わなかったこと、晩年首都ローマを捨て、保養地カプリ島に塩野の言葉を借りれば「家出」したまま帰ってこなかったことなどによるものらしい。
しかし、現実には、抜群のバランス感覚と人事能力で、カエサルアウグストゥスが築き上げた帝国支配を盤石にしたのがこの人であるようだ。

若い頃、弟の死に際に危険を顧みずに駆けつけて腕の中で看取ったことや、アウグストゥスによって強制的に離婚させられた最初の妻をずっと想っていたらしいエピソードなど、本当は情の深い人のように思えるのだけれど。