「変身」 「いち・たす・いち」
久々に東野圭吾を読む。
「変身」(講談社文庫)映画も今やっている。
主人公の純一は、気の弱い会社員で、絵を趣味としている。画材ショップで知り合った彼女とささやかに安定した生活を営んでいたが、ある事件に巻き込まれ、脳に銃弾を受ける。そして人類史上初の脳移植手術を受けた。無事意識は戻り、順調に回復しつつあるように見えたが、次第に人格に変化が見られていく、というストーリー。
代表作としても名高い一冊のようだし、確かに面白いことは面白い。自分を失いつつある主人公の恐怖感は切実に感じるし、、愛する人がどんどん変わっていくことへの恋人の悲しさは切ない。「アルジャーノンに花束を」を思い起こさせる。
が、どうも素直に楽しめないなあ。医学領域の描写が稚拙に過ぎる。こういうとき医者になって損したなぁと感じるけど、まあそういう本。精神科関係の記述も一般の人が持っている間違ったイメージそのもので、残念。「ブラックジャック」を批判する時にも「物語の本質とリアルさは関係ない。大事なのはメッセージだ」と言われるのだが、シリアスな構成にしているなら細かい部分をなおざりにしないで欲しい。現にしっかり描いている小説は沢山あるのだから。
- 作者: 東野圭吾
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「いち・たす・いち」中田力(紀伊國屋書店)
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講演を実際に聴いたこともあるけれど、流ちょうな英語で話しも上手く、つくづく頭がいいんだなぁと感じる人。
内容は、脳研究発達史を理解するに必要な予備知識をわかりやすく解説しつつ、人間の意識はどのように作られるのか、というところを肝として語っている。
後半、意識について語るところまでは初めてこの手の本を読む人でなければ特に目新しいことは感じない。先駆者たちの天才ぶりに改めて感動する。
で、大事な意識とは何か、というところだが、言わんとすることを正確に理解できはしない自分の頭の悪さは置いても、中田先生の頭で考えただけのものである。
こんなことを考えて、しかも自信を持って語れるのはすごいのだが、やや独善的にすぎるのではないか。正しいか全く証明できていないことが、これだと本当にそうなんだと誤解を与えかねない。
ロジャー・ペンローズが提唱する意識論もそうだが、天才の主張する脳理論てどうも胡散臭い気がするのは自分だけなのか。
自分の頭が悪いだけかなあ。