「愛のコリーダ」 大島渚

大島渚監督、昭和51年の作品だ。

露骨な性描写が日本では問題となり、大幅に削除された作品だけが上映されたり、関連本がわいせつだと訴えられたりした。表現において、わいせつとは何かということが裁判の場で議論された点で歴史に残る。

作品は昭和11年に起きた阿部定事件をほぼ正確になぞっている。
内容はセンセーショナルではあるが、単純で、料亭吉田屋主人吉蔵を愛人であり、住み込み女中であった阿部定が殺害、性器を切り取ったというものである。詳しくは、関連HPが沢山あり。

昭和11年といえば、2・26事件のあった年。随分重苦しい雰囲気の中、この事件は猟奇的ではあっても、一服の清涼剤として働いたようだ。

映画そのものに関して言えば、現代の基準からすれば、まぁどうというものは感じない。当時はそれはすごかったでしょう。
ただ、あくまでも現実の事件に沿って…という狙いからすれば必然的にこのようになるのではないか。露骨に描写しなければ意味無いでしょう。そういう事件なんだから。
よく、究極の愛の姿だとかの文字が躍るが、深い意味なんてかんじないなぁ。

事件そのものよりも、芸者さんたちの前でやっちゃうところとか、それを観ている芸者さんたちが仲間内で、まだ経験の浅い若い子をよってたかって弄ぶシーンなどの方に驚いた。

ちなみに海外では高く評価されたこの作品、英題は'in the REALM of the SENSES'。訳しにくいなぁ、というか訳せない。
借りたDVDが海外版だったので、ずっと英語字幕を出しながら観たのだが、どうも訳がこなれていない気がした。
英語でニュアンスを出すのは難しいなぁ。逆も然りだけど。
英語評をいくつか見たら、「発音がモノトーンでよくわからない」なんてのも。悲しいねぇ。