過去へ戻る

今年の映画だが、「バタフライ・エフェクト」を観る。

時折記憶を喪失する主人公エヴァン。大学生になり、記憶の欠落を無くすためにセラピストに勧められてつけていた日記を読んでいると、その場面に舞い戻るようになる。
エヴァンにとって幼なじみの女性ケイリーは何よりも大切な存在だが、元の世界では悲惨な一生を送っていた。彼女を幸せにすべく、過去に戻った場面でほんのちょっとずつ良かれと思ってするエヴァンの行動。それを受けて変わった未来。だがどれも上手く行かない…。

過去に戻って現在ある状態を変える、そんな誰もがその実現を願うことを現実にできる男のストーリーだが、何を変えても良い現実を作り出すことができない。
だが、最後に選んだ結末がとても切ない、胸に染みいる貴重な選択で、今年の映画の中では一番印象に残ったとも言える。

DVDのこのエディションでは、プロデューサーによって改変させられた上映版の結末(これが悪いわけではない)ではなく、オリジナルの結末も見ることができる。
そしてそれによって、上映版ではやや不可解だった場面が全て整合し、より切ない主人公の選択に涙できる。
不覚にも見ていて本当に泣いてしまい、やや自分の感情の不安定さも思い知る。

ちなみに劇場版に近い別エンディング、というのも2つ用意されており、その内1つなどは思わず笑ってしまう。
監督のコメントが入っていて、演出の意図がしっかりわかる。

2枚組ではメイキングが大して面白くないDVDもあるが、これは文句なく価値ある2枚組。


この映画を見たときに真っ先に思い出したのはこの作品。

リプレイ (新潮文庫)

リプレイ (新潮文庫)

41歳の主人公は突然の不整脈で命を落とす…がそこから記憶を保持したまま大学生時代に戻る。そして残りの20数年間をまたやり直すことになる。何度も、何度も。
成功し、充実した年月を過ごしてもまた舞い戻ってしまう。何を成し遂げてもそれは無に帰す。そんな主人公が絶望を感じる中、彼と同じリプレイヤーの女性を見つけ…。

過去に戻ってあの場面をやり直せればいいというのを誰もが考えるのは上述の通り。だが、なかなかそれは上手くいかないもの。タイミングを間違えてしまうのだ。例えば主人公は死を迎えたときにはしっくりいっていなかった若き妻を探し出して声をかけてみるが、やけに自分に詳しい主人公を見て、若き妻は惚れるどころか、気持ち悪がってしまう。
そう、今親しい人と、過去に戻って果たしてまた親しくなれるかっていうと、そいつは難しいんだねと。今この人と親しいのは偶然のタイミングの積み重ねなんだなぁということ。