虫の味

何気なく本棚を見ているとつい手に取ってしまうこの本。

虫の味

虫の味

南山堂の「薬局」という雑誌に1985-88年にわたって2人の著者が「食味昆虫学」という題で連載していたものに加筆修正したもの。

飲み会で編集者に「あの虫は美味しい」とか「食べられる」といった話をしていたら実現したらしい。

題名通り、中は虫の味の記述が満載。
蜂の子やイナゴは一応よく見るけれど…。
ざっと章立てを見ても、

ザザムシの佃煮
ゴキブリは珍味となるか
セミの缶詰
ユスリカのふりかけご飯
ムカデ
ミノムシのバター炒め
カマキリの唐揚げ
虫粥
食えなかったカメムシ

などなど。カメムシは食べられなかったそうです。最初から生食は考えず、「熱湯で殺し、天日で乾燥したものを、飲用もしくは『ふりかけ』にと考えた。」そうだが、大変な悪臭で、口に入れるなどできなかったという。

クロゴキブリは、「頭、翅および足を取り去り、消化器を取り除く…これを塩水で良く洗い、水を切ってポン酢で食べる。…臭気が口に残るがホヤの刺身と思えば気にならない」。
ゴキブリの卵鞘は日本酒に入れると味に丸みができて美味だそうです。
そうとは知らない友人に飲ませたりしていて、悪い人。

著者の1人、篠永哲先生には授業も受け、感銘を受けたため、先生が助教授をしていた東京医科歯科大学寄生虫学教室までお邪魔したこともある。とても穏やかな紳士然とした方で、コレクションの世界のハエを嬉しそうに見せてくださった。アフリカの風土病、眠り病を媒介するツェツェバエの絵はがきをいただいた。

篠永先生のスライドで印象に残っているのは、「どうです、似ているでしょう?」と語って出した、「血を吸ったマダニとチョコボールを並べた」ものと、明かりに飛び跳ねる習性のある胴長の魚が漁師の目に突き刺さっているもの。

ちなみにこの本の中で、うっ、それはちょっと…と感じる内容は全て林先生の記述である。

虫は貴重な蛋白源であり、何しろ生息数が膨大で溢れているのだから、いざ非常時には食べられればそれに越したことは無いのでしょうが…そんな状況にならないことを祈りたいものです。