直木賞に東野圭吾か…

直木賞東野圭吾。今回の作品は、言わずとしれた「容疑者Xの献身」。

確かに面白かったけど、選考委員、阿刀田高の「人間が描かれているかどうかについて激しい議論になった。しかし、特徴的なトリックを上手に作品化し、推理小説として優れている。完成度も高い」というコメントはその通りだと思う。
完成度は高いけど、読んでしばらく経つと、主人公の心理があれでいいのか、深みはないのではないか、と思えてくる。

東野圭吾だったら、なぜ「白夜行 (集英社文庫)」の時にあげないのか激しく疑問。確かあの時は「最近の本は分厚すぎる」とかいう委員がいなかったっけ?本読みだろ、お前らは!と怒りを覚えた気がする。

この本には文学賞の内幕が面白く書かれていてとても楽しい。大森望豊崎由美の対談形式で、2人とも飾らないから本音で良い。

文学賞メッタ斬り!

文学賞メッタ斬り!

章の最後には、「文学賞の心得」として、各文学賞がユーモア混じりにコメントされていて、
直木賞は、賞を与えるタイミングを間違えている」。
まったくだ。それが特に顕著なのが宮部みゆき
火車」(第108回直木賞候補作)を落とすなんて、考えられないことだ。しかも、渡辺淳一のコメントなど、「何を書きたかったのか、ただ筆を流しているとしか思えなかった」…あんたは性的妄想だけ描いていなさい!って悲しくなる。
浅野次郎も、大森が「『鉄道員』は直木賞らしい短編集なんじゃないの」と言うのに対し、豊崎は「ダメですよー。だって、浅田さん薄笑い浮かべながら書いてるんだもん。…『蒼穹の昴』みたいな渾身の力を込めて書いた労作にあげないんじゃ、作家の励みにならないし、『こんな程度のもんが世間ではウケるんだ』なんて思わせたら、その後の創作人生にも悪い影響及ぼすっちゅーの」と反論。拍手を送りたいです。私は。

ただ、直木賞の落選で唯一納得できたのは横山秀夫半落ち (講談社文庫)」。
はぁ…調べてみると、北村薫は「スキップ (新潮文庫)」(114回)でも、「ターン (新潮文庫)」(118回)でも落選している。悲しすぎる。ま、きっと北村薫は良い作品でいつか受賞すると信じているけれども。
恩田陸もあげるべき作品であげてないよう。

ところで、「白夜行」、テレビドラマ化されて見てはいないけど、あの配役は無いんじゃないか。主人公の雪穂にアイドル上がりは使えないだろー。セックスだって武器にするんだぞ。あり得ない…。

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)