もてない男

小谷野敦も結婚して、そして離婚して、また「もてない男」として帰ってきた。

帰ってきたもてない男 女性嫌悪を超えて (ちくま新書 (546))

帰ってきたもてない男 女性嫌悪を超えて (ちくま新書 (546))

前作もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書)では、「もてない」を「好きな相手に受け入れられない男」と定義した故に、そんな定義ならもてる男なんていないのである、という批判をどこかで読んで、自分にはそれが印象的だった。

小谷野にとってもてないことによるもっとも悲しいのは「セックスができないこと」のようだ。同じ「もてない」でも、男と女は質としての性欲がそもそも異なり(平均としてだが…世にはもちろん並の男よりも性欲の激しい人はいるので)、どうしても相手を見つけられない男にとって風俗は必要悪であり、どんなに結婚が破綻していようと離婚しないのはセックスの相手を確保できている事実があるから、と論じる。そして、小谷野の言う「もてない」は本当に徹底してもてない人間のことだ。世の中にはびこる恋愛幻想の中で、どうやら殆どの人は定期的なセックスパートナーを確保し、恋愛しているようだし、それを目指してもいる。30代、未婚女性が「負け犬」と称することもあるが、そういう人たちは「恋愛はしているけど結婚はできない」そんな人ではないか。それは甘い。小谷野からすれば、
  >>「恋愛もできず結果として結婚もできない」…(略)そういう女たちというのも結構いるのではあるまいか。たぶんそういう人たちは「負け犬」以下の気分で人生を送っているはずである。そういうのは「犬の腐乱死体」とでも言うのだろうか。…(略)犬の腐乱死体は遠吠えもできない。<<(太字は引用者)
のだ。「恋愛する」にも「能力が必要」。現代のこの自由恋愛の世の中では「異性から選ばれない男女」というのが存在しているのだと指摘する。
怨念ですねぇ。


出会い系サイト、テレクラやお見合い業者に申し込み時の体験談を赤裸々に綴ってもいる。出会い系サイトに申し込んだときのサクラメールの数々であるとか、お見合い業者の引き留め策など笑えます。小谷野は「高学歴で知的な女性好き」なので、女性の大学名をひたすら知りたがる一方勧誘のおばちゃんは「大学名を気にする方はいらっしゃいませんよ」とかみ合わない。すぐには入会せずに友人と相談すると言って帰ろうとすると引き留めるおばちゃん。
  >>「…お友達に相談したら、じゃあ俺が紹介してやるよ、とか言われて、でもご成婚には至らなかったりするんですよ」などと支離滅裂なことを言う。紹介してくれる友達がいるくらいならこんなところへ来ないではないか。<<
この業者はサンマリエ。
まぁ小谷野もこんなことをしていたのは、どうしようもなく寂しいときで孤独に耐えかね、合わないことをした、ということらしい。そういう時はありますね、確かに。


そうそう、私はオーネット(あれ、ツヴァイだったかな?)のアンケートに答えたことがある。メールにあった「結婚度を判定します」とかいうのに何となく答えてみる気になったのだ。相手の条件に「大学院卒、年収500万円以上」と書いてみたら、即資料が送られてきて、事務所に来てくれと。が、寂しくはあっても結婚する気などさらさら無かった。しつこいメールも嫌なので「すみません、冷やかしでした」と担当者に送ると、
   >>もう二度とアクセスしないでくださいね。<<
と厳しいお言葉。いやぁ冷やかしのお客さんを大事にしないといけませんよ、その人が未来のお客さんになるかもしれないんだから…なんてね。