ZOO

ZOO 1 (集英社文庫)

ZOO 1 (集英社文庫)

乙一を買うのは久しぶり。「GOTH 夜の章 (角川文庫)」以来。「ZOO」はその題名と装丁のインパクトからずっと欲しかったが文庫になるのを待っていた。
短編集だ。
例によってファンタジックに構築された世界の中で描かれる、ちょっと乾いた残酷性の発露を主人公たちが示す作品と、そういう残酷さとは一線を画した、どちらかといえば切ない最後にほろっとさせられるような作品が混ざっている。知らなかったが、前者を黒乙一、後者を白乙一というらしい…。
今回は元の単行本から、映画になったものを「1」に、それ以外を「2」に収録したようだが、内容につながりはなく、問題ない。また、に関しては、アイディア勝負の短編小説だから書かないが、総じて「1」の方がレベルは高い気がする。どちらにしても乙一らしいです。
ただ、いつもは「うーん、乙一君て可愛いんじゃなかろうか」と思わせる後書きがついている(本読み友達の看護師Kは大ファンだ)のだが、今回は「1」には漫画家古屋兎丸との対談、「2」は島本理生の解説。正直どちらも余り面白くない。


ところで乙一作品を読んでいると、少女漫画を読んでいる気にとらわれる。現実に人がもっている生臭さをそのまま描く桐野夏生とは違い、残酷さの発露は必ずファンタジー色を伴った世界の中で描かれていて、ともするとリアリティの乏しい設定が読んでいて苦にならないのは上手いということなんだろうな…。


夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

乙一デビュー作。17歳です。既に今の乙一ワールドが出来上がっている。すごい。
主人公たちは小さな子供だけど、彼らの「優しいお姉さん」が印象的。優しい人の中に巣喰う「残虐を愛でる心」を感じます。