勢古浩爾 藤原正彦

幸いにも我が当直先にはそこそこ気にはなっても、買うまでには至らない本が沢山転がっている。

ああ、顔文不一致 (新書y)

ああ、顔文不一致 (新書y)

当直先で読んで今は自宅だから、内容を正確には覚えていないけど…。
文章を見れば顔を見たい、というのが本音であるのは事実。
昔の文豪を見て、重々しい顔に納得した覚えのない人はいないだろう。
中原中也はあのアンニュイな顔が無ければきっとあそこまで売れなかったんだろう。渡辺淳一もあの顔にして…と思っていたが、スケベ顔め、と言われてみればそう思えてくる。つまり顔文一致しているのかも。浅田次郎はあんな、あんなに素晴らしい泣ける作品を書くのに、あんなやくざ顔。顔文不一致の代表格ですね。

私にとって、顔文不一致の代表といえば、いつの間にやら国家の品格 (新潮新書)が200万部を超えているという藤原正彦。高校生に上がり、中学に遊びに行ったとき、天文部の顧問から勧められたこの一冊、若き数学者のアメリカ (新潮文庫)を読んで、「(ビジュアル的に)猛烈にかっこいい」数学者を思い浮かべない人はいないんじゃないかしらん。後年、顔写真を見たときはがっかりしたものだ(勢古の本を紹介しているのだから、こういう感想も許してもらいたい)。とはいえ、見慣れると合っている気がしてくるんですけどね。


当直先には1冊転がっていた。

祖国とは国語 (新潮文庫)

祖国とは国語 (新潮文庫)

藤原正彦は、例のベストセラーでとにかく、国の現状を憂い、武士道精神を復活させよ、情緒力が国を救うと情熱的に語る厳しい感じの人、もしかして右翼か?と思う人もいるかもしれない。が、実際のところは本来のエッセイは力にはあふれているものの、やや自虐ネタに溢れ、恐妻家の側面も多々望ませる微笑ましい文章を書く人である。
国家の品格」で主張していることも、古くからの藤原ファンにとっては目新しいことは何一つ無いんだけどな…。
エッセイでも強調される一つの事。自分にとって印象的なのは、「美しい数学に価値がある」ということだ。紙に平行線を何本も引き、そこに針を落とす。針の長さが平行線の1/2の時、針が平行線と交わる確率はπ分の一である。
藤原正彦がその美しさに絶対の価値観を置いていることに嬉しさを感じる。

ちなみにその問題は「ビュフォンの針」として知られるそうな。
↓証明と、シミュレーション。面白いですよ。

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ところで勢古の本には最後に軽妙な毒舌とは離れて熊本大医学部の藤井輝明氏のことが紹介される。海綿状血管腫という残酷な病気を背負ったが為に、その顔でひどい目に遭いつつ、しかし転換点で出会う人に恵まれ、現在は熊本大教授。高齢者福祉に関しての講演会を幅広く行っている。読んでよかったなと思わせる一章。
タッチ先生 藤井輝明 オフィシャルサイト