ビッグ・バン

サイモン・シンの「フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで」を初めて読んだときは、数学者たちの業績が活き活きと語られるその描写と、フェルマーの最終定理が証明されたという、衝撃的なニュースが人類にもたらした意義をその証明の概要と共に大いに「わかった」気にさせてもらえてとても衝撃的だった。

ビッグバン宇宙論 (上)

ビッグバン宇宙論 (上)

そのサイモン・シンの最新作。ビッグバンという言葉はもうどこででも聞くことが出来るから誰もが知っていると思うけど、その深いところまでは普通知らない。それにどういう人物が関わったかも。
フェルマー…」でもそうだったけれど、サイモン・シンは目的の理論の説明に向かうまでにそれまでの科学史を概説してくれる。それも科学者たちの人生を巧みに織り交ぜながら。そんなわけで、彼の本を読めば最新理論(本当の最新とまではいかないかもしれないけれど門外漢にとっては十分だ)に至る道筋を、科学の復習をしつつ、また時には、あぁ「相対性理論ってそうだったよね」って何度読んでも次にはすぐ忘れることを噛んで含めるように吸収することが出来る。何といっても、時代毎の最新理論登場に至るドラマに隠された人間模様があることで読んでいて退屈することがない。
まだ途中なんですけどね。

宇宙論といえば当然最初は、天動説に取って代わった地動説の登場を描写しないわけにはいかない。で、それはもちろん良いのだけれど、プトレマイオスの天動説がかなり長く、しっかりと解説されるのを読むのは結構骨が折れたりする。天動説による惑星軌道の解説は、本物の楕円軌道による説明に比べると、周転円、導円、エカント、離心円…などが登場するかなり複雑なものなのに加えて、理解しても結局は間違っているのだ。でもまぁ、そのおかげで、地動説の実際における正しさというだけでなく、理論上のシンプルさも納得できるわけです。

アインシュタイン相対性理論が直接証明されたのは、皆既日食で遠方から来る星の光が太陽の重力によって曲げられるのが確認できたから、だが当時(1910年代)は世界情勢も緊迫しており、相当の苦労があったらしい。
1914年8月21日クリミア半島で見られる皆既日食に合わせて出発したドイツ人フロイントリッヒの観測隊は途中でロシアにスパイ容疑で逮捕された。前月にオーストリア皇太子がサラエボで暗殺、彼の旅行中にドイツはロシアに宣戦布告しており、望遠鏡を持ったドイツ人がロシア領をうろつくなど考えられないことだったのだ。


暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

サイモン・シンの前著はこれ。「フェルマー…」読んだ後、次著の訳出まで待つことが出来ず、原書で読んだが、英語でも結構わかりやすく、洋書として読むのもお勧め。暗号について深く知ることが出来ます。もちろん人間ドラマ付き。
とってもシンプルな暗号、シーザーの暗号は、次のように作られる。
アルファベットを、それを数文字ずつずらして表記する。
veni, vedi, vici → YHQL, YLGL, YLFL
と3文字ずらして表記すればもうわかんない。使用者はkeyとして3というのを知っていればいい。
ちなみに上記の意味は、「来た、見た、勝った」。ポントス戦いの勝利で凱旋したシーザーのお言葉。