ビッグバン2

ビッグバン宇宙論 (下)

ビッグバン宇宙論 (下)

ようやく読み終わった。論文校正に難渋していたせいだ。まったく。
それにしても宇宙創造に関する話は面白い。それもこれだけわかりやすく宇宙論の発展を、細かい微調整はあるにせよ、大枠においてもはや定説となっているビッグバン仮説が生み出され、正しいだろうとされていく過程を書いてくれている本も無いのではないか。雑誌「ニュートン」などでいくら図解入りで説明されてもどうにも印象しか頭に残らないのに対し、これを読めばかなりな程度理論的基礎がわかる(そういう気にさせてくれる)。

登場してくる天文学者たちが個性的でとても魅力的なのだが、異色なのがビッグバン理論に多大な貢献をしたベルギー人天文学者ジョルジュ・ルメートル。彼はカトリック神学者でもあるのだ。科学と宗教は相容れない、矛盾対立し、現代において宗教家は科学者たり得ないのではないか、と思うのだが、彼に言わせれば違うらしい。ルメートル一般相対性理論から宇宙には始まりがあり、そして現宇宙は膨張しているというモデルを厳密な計算により導き出した。当初、相対論の提唱者、アインシュタインはそういう動的な宇宙を忌み嫌ったが、後年エドウインハッブル(ハッブル宇宙望遠鏡ハッブルさん)によって観測から膨張する宇宙の証明がなされるとルメートルの正しさを認めて和解した。


ビッグバンに対抗する理論としてはフレッド・ホイルの定常宇宙論があるが、結局の所は始まりの宇宙の化石といえる電波、背景投射の存在からほぼ決着はついたようだ。「ビッグバン」という言葉がビッグバン理論を忌み嫌ったホイルの講演から広まったのは皮肉。


それにしても、ビッグバン理論によれば、宇宙は突然、ぽっと何も無いところから生まれたわけで、そう、普段我々がいくら「何も無い」と言ってもそこにはれっきとした「空間(と時間)」があるのに、宇宙は空間もそして時間も存在しないところから誕生したのだ。何それ?ってビッグバンの話を初めて聞いた時(中学生?)から不思議。宇宙物理学者さんの頭はそれを割り切れるのでしょうか…。とはいえ、そこに神を持ち出す人がいるが、あまりに安易。わからなきゃ神様に任せようなんて無責任なので、どうにかいつかは感覚的に納得できるような説明が欲しいんですけど。
多分、「時間がない」ということが感覚とあまりに乖離している。いつだったか、「日経サイエンス」を読んでいたら、時間は分割も出来るらしい。粒子なの?わからん。