精神鑑定

当直をしつつ、精神鑑定本の1冊を読む。ほんの少しだけど。

精神鑑定事例集

精神鑑定事例集

中田修氏は精神鑑定の大御所。今活躍中(いやちょっと古いか…)の福島章氏や小田晋氏の師匠でもある。
で、読んだのは大久保清鑑定。
大久保清は1971年3-5月のわずか41日間に8人の女性を殺害した大量殺人者。そういう世間を騒がす大事件が起きると、世の人々は動機を求める。それがわからないと気持ちが悪いから。評論家はもっともらしいコメントをし、精神科医は動機の解明を、事件を起こした原因は何なのかその究明を期待される。が、大抵はわからない。いや説明はされるけど…大久保清の場合は(詳しい説明は省くが)兄への殺意が「私には親(ないしは親戚)に警察官がいるのよ」といって抵抗する女性への殺意へ転化されたとの本人の言葉と推測がある。個人的動機としてはともかく、一般的に納得できる動機ではないでしょう。もちろん、特異な事件だから特異な理由があって良いんだけれども、「なぜそれが殺人につながるのか」はやはり理解不能である。清は本音を語らず、それが鑑定人のもどかしさにつながっている記述があるが、たとえ本音がわかったところでやっぱりわからないんじゃないかなと思います。


それにしても中田氏の鑑定の詳細さ、徹底ぶりに凄さを感じる共に、読む者に疲れを覚えさせるだろう。そして結局何があの極悪犯罪の原因となったかはわからないからね〜。
どんなひどい環境に育ってもそれだけで犯罪者は育たない。清は兄と何人かの姉妹がいるが、殺人者は清だけだ。じゃぁ生物学的理由か。清の母方には犯罪者が多かった。でもやはり清の姉妹たちは別段性格異常者でもなければ犯罪を犯してもいない。ありきたりな説明を超えて、犯罪に至らしめるのは何なのでしょうかね。


ところで、精神鑑定にもマニュアル本がある↓。

精神鑑定実践マニュアル―臨床から法廷まで

精神鑑定実践マニュアル―臨床から法廷まで

これはそのものずばり。私は簡易鑑定を3回やった(窃盗、窃盗未遂容疑、無銭飲食)ことがあるが、大いに参考になった。ただ、起訴前簡易鑑定でこの本にあるように証人として裁判に出廷させられる可能性があるならたまらんなぁ…。

福島章のこの本には精神鑑定の基礎となる知識を教えてもらった。

ただ、最近のこの人は大丈夫なのか?と目を疑う記述のある本もあったりする↓。
子どもの脳が危ない (PHP新書)

子どもの脳が危ない (PHP新書)


精神鑑定の事件史―犯罪は何を語るか (中公新書)

精神鑑定の事件史―犯罪は何を語るか (中公新書)

大学生の時面白く読んだのはこれだった。
あの、ダニエル・キイスのビリー・ミリガンは詐病だと説得力を持って論じていて、新鮮だった。自分も今ではビリー・ミリガンが真性の多重人格者であったとは思っていないし、起訴されたレイプ事件において責任能力が無かったとは考えない。