吉村昭が死んでしまうなんて…
今日は、やっぱり特別研究上で良いことがあった日ではないけれど夜は病院で楽しく話も出来、良い日ではあった。
が、帰宅して吉村昭の訃報に接し、かなりショックを受けている。
最も好きな小説家、最初に本当に好きだと自覚した作家なので。
中学2年だったかと思うけど、網走刑務所を含め4度の脱獄に成功した昭和の脱獄王を描いた「破獄 (新潮文庫)」が最初だった。
肺ガンで壮絶死した弟との関わりを描いた「冷い夏、熱い夏 (新潮文庫)」、黒部ダム建設をその大自然への挑戦を縦軸に、横軸には工事監督者と工人たちとの普段は意識しない対立をおいて描いた「高熱隧道 (新潮文庫)」、150cmにも満たない小男でありながら日露戦争後の難交渉を成し遂げた小村寿太郎を描いた「ポーツマスの旗 (新潮文庫)」、「解体新書」発刊を巡って、杉田玄白ではなく前野良沢を主人公に据えた「冬の鷹 (新潮文庫)」などなど、魅力的な作品は数え上げたらきりがない。
江戸末期を描いた作品も多く、中でも吉村昭は、漢方全盛の中で決死の思いで科学的な西洋医学を日本に導入しようとした医家たちを沢山描いている。中でも北陸の地に種痘を根付かせた笠原良策の辛苦が私にはとても印象的だった。
- 作者: 吉村昭
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吉村昭は漂流者に対する愛着が深いようで幾つかの作品がある。
江戸は天明年間に、時化にあって4人の船乗りが漂流、漂着した先はアホウドリの渡ってくる火山島だった。その中で生きる希望を失わず、12年の苦闘の末、ついに生還した長平。
この作品が一番好きかも。
漂流 (新潮文庫)
- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
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吉村昭の作品には司馬遼太郎のように明治を描いた作品も多いが、彼と異なり、概して筆致は冷静で、記録的、しかもそれでいて堅いわけではなく、読む者の心を奪い、飽きさせない。だからその文体は英訳にもきっと向いている。実際に幾つかは英訳され、評価は高い。また、戦時期に結核を患って大いに苦しんだせいか、彼の作品には死を意識しつつそれと向き合った主人公たちが多い。
- 作者: Akira Yoshimura
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浮気した妻と相手の男を刺殺し、その母親までも焼殺して無期懲役となった男が仮釈放となり、そしてまた罪を犯してしまう。
仮釈放 (新潮文庫)
映画「うなぎ」の原作は「闇にひらめく」(「海馬(トド)」に収録)だが、冒頭はここからとったのではないかとも思える。
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あぁ死んでしまうなんて…。