カラヤンとフルトヴェングラー
- 作者: 中川右介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 新書
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ベルリンフィルの現在の常任指揮者はサイモン・ラトルだが、その2代前があのカラヤン。そしてその前がフルトヴェングラー。カラヤンはクラシック音楽界に長年にわたって君臨した「帝王」だし、フルトヴェングラーは史上最高の名指揮者として語り継がれる存在。そんな2人は仲が悪く、なぜフルトヴェングラーの後釜にカラヤンが座れたのか、にはもう1人の指揮者、ルーマニア出身のチェリビダッケの存在が関係する。戦後まもなくのベルリンフィルを支え、聴衆に圧倒的人気を誇り、しかもフルトヴェングラーを慕い、可愛がられたチェリビダッケが何故後を継がなかった(継げなかった)のか。これまでにも類書は多かったけれども、この本では特にそれぞれの指揮者の性格の対比に当時のナチスドイツを背景とした世情を丁寧に絡めて描いているように感じた。
フルトヴェングラーの性格の実像が面白かった。。自分もそうだが、交響曲ファンなら音楽的にはフルトヴェングラーの方がカラヤンよりずっと上のように感じられるものだ。「カラヤンはきれいなだけなんだよね〜。それにナチ党員だった」一方、情熱的指揮ぶりのフルトヴェングラーはドイツに留まったとはいえ、「ナチスに利用された被害者であり、多くのユダヤ人音楽家を助けた人格者」というイメージが強い。ところが、実はフルトヴェングラーは猜疑心が強く、嫉妬深い性格で、さらに無類の女好き(非嫡出子を含めると13人いるとか)。カラヤンのことは露骨に嫌い、ベルリンフィルにもウイーンフィルにもカラヤンに指揮させないよう圧力かけまくる。そんなわけで、フルトヴェングラーも十分人間らしくて、それには別に失望するわけではなく、そういった芸術家の二面性がとても興味深く感じられる。
誰かさんに似てるかなと思ったら日本の漫画界の巨匠(嫉妬深かった点)ですね。
カラヤンとフルトヴェングラーの対比、といったら↓。
ベルリンフィルのティンパニ奏者でどちらの下でも演奏した貴重な証人。
- 作者: ヴェルナーテーリヒェン,高辻知義
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
- 発売日: 1998/12/10
- メディア: 単行本
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カラヤンの性格を示す話。
カラヤンはとても自己愛が強くて、自身を崇高な存在だと信じていたわけだが…。
ベルリンフィルのある楽団員は物真似が得意。その彼が、いろんな指揮者の真似を楽団員とカラヤンの前でしていた。そこで、誰かが「カラヤンは?」と言うと、彼はおもむろに目を閉じ、カラヤンの指揮を真似し始めた。少しばかり表情を曇らせるカラヤン。そこで今度は「フルトヴェングラーは?」と問うと、「できない」。
唯一無二なはずの自分の指揮を真似しながら、フルトヴェングラーはできなかった彼のことをカラヤンはしばらく無視し続けたらしい。
ところで、昔は誰でもカラヤンという名を知っていたと思うのだけれど、最近若い人に聞くとほとんど誰もカラヤンを知らない。あれほど名声を世界に残したかった人なのに、何だかちょっとお気の毒。